Once in a lifetime
T.Mさん
教育学部 学校教育教員養成課程
留学期間:2023年9月~2024年8月
留学先:カトリック大学ルーヴェン
留学先大学について
KU Leuven(以下KUL)は1425年設立されたヨーロッパ最古のカトリック系総合大学であり、「革新的な大学ランキング」では1位にランクインされています(2024年10月当時)。正規の学生は約4万人、留学生は約1万人在籍しています。メインキャンパスはLeuvenに位置し、首都Brusselから電車で20分~30分、ブリュッセル国際空港から電車で15分とアクセスが良い立地にあります。
KULには日本語学科があります。その学科が主催する月1回の「Gakusei Forum」やKULの学生によって主催される「Pangea」といったイベントに積極的に参加したことで、新しい出会いや国際交流といった経験をすることができました。
学習面について
授業は基本的に講義形式です。特に留学生向けの授業(以下PECS)ではベネルクス三国の歴史やEUに関する授業などベルギーやヨーロッパならではの興味深い内容が多数用意されています。また正規生向けの授業も履修可能ですが、専門的な知識を求められることが多く、PECS以上の予習復習時間を確保する必要があります。授業時間は2時間~3時間で、最初は英語でのイントネーションや発音の聞き取りに苦労しました。しかし数か月経つ頃には、友人のサポートもあり、おおよその内容を理解できるようになり、授業スタイルにも慣れてきました。
テストは記述式、選択式(選択肢を間違えると減点されます)および口頭試験があり、難易度は高いと聞いていたので、テスト対策は計画的に進めました。記述式のテストでは単なる暗記にとどまらず、歴史的な流れや背景、その出来事の原因など、幅広くそして深く理解することが求められました。後期にはKULのテスト傾向をつかんだ上で、大学の授業で得る知識に加えて、旅行をしたり、各国の友人とのつながりを積極的にもち、街の歴史、風土、食文化に触れることでより学びを深めていきました。
KULよりアジア人は基本的に一学期3コマの履修を推奨されていますので、比較的時間にゆとりがあります。授業が無い日は自宅で英語学習をしたり、言語交流するKULのイベントに参加して会話の機会を積極的に作り、他国の文化や習慣の理解に努めました。こうした積み重ねが自然と英語力UPに繋がっていったのだと思います。
生活について
ルーベンはとても治安が良く、住みやすい学生街で、街自体が円形になっており、大学のキャンパスを中心とし、スーパーやアジアンスーパー、レストラン、自然あふれる公園、植物園、教会、市庁舎なども円内に集中しています。
授業の無い日や休日はKULや日本語学科主催のハロウィンやクリスマスなどのイベントに参加したり、旅行やボランティア、大学のスポーツジムにあるプールで運動するなど外出する機会を設け、限られた留学生活時間を最大限有意義に過ごせるように心がけました。
私は留学中の滞在はKULの寮でした。様々な国の出身の人と交流をし、仲を深める一方で、生活習慣の違いからトラブルもありました。特にキッチンでのそれぞれの国の使い方が異なり、様々な価値観に触れることで「異文化理解」の難しさを体感したことは、共同生活をしたことによる良い意味での貴重な経験となりました。
留学で得たこと
私は今回の留学で得た事は大きく分けて2つあります。
1つ目は「国別で相手を判断するのではなく、個人として相手をみる大切さ」です。
私は以前、中国という国に対して共産主義や気が強いといった偏見を持っていました。しかしKULで出会った中国人の親友は私が困っている時に手を差し伸べてくれ、文化や教育についても多くのことを丁寧に教えてくれました。日本人でも多様な考え方や価値観を持っているように、中国人やベルギー人をはじめ、他国出身の人も一人一人異なる考え方、価値観を持っています。国によって人の優劣、イメージを判断するのではなく、個人として交流することで相手を理解し、受け入れ、尊重することが異文化理解の第一歩だと実感しました。
2つ目は「自分に自信をもつことができた」という点です。到着当初は、公共交通機関の利用方法や携帯電話の設定回線など、日本では当たり前にできていたことができず、非常に不安や焦りを感じました。しかしながら、自分で調べたり、現地の人に直接尋ねる中で、一つ一つの課題をクリアすることができ、「問題解決能力」や「創造性」が増し、いつの間にか自信を深めることができました。この「自信」は、行動力にも繋がり、貧しい地域に住む子どもたちと一緒に遊ぶボランティア活動、オランダの小学校やブリュッセル日本人学校の単独訪問、JapanFesの企画、さらにはEU圏内ならどこでも行きやすいためヨーロッパ21カ国の旅行を通して、多くの他国の友人との関係を深め、日本では得られない経験を積むことができました。
後輩へのアドバイス
「海内存知己、天涯若比邻」―これは私が中国人の親友から別れの際に教えてもらった言葉です。「遠くに離れているけれど心はいつも近くにある」という意味で、今でもこの言葉を胸に彼女とSNSを通じて交流を続けています。私は彼女から生活・文化・思想など詳しく学び、そして中国に対する見方も大きく変わりました。
また寮生活の中で他国の友人を招待し、親子丼やカレーライスを作っておもてなしをし、折り紙でネームプレートや箸入れをつくり、日本を知ってもらう工夫をしました。このように日本の文化や慣習を紹介する中で、改めて自分で日本の魅力に気づくこととなりました。
留学中、私は多様なバックグランドを持つ人々に出会い、時には日本の常識とは異なる反応を受けて驚きや嫌な気持ちになったこともありました。しかし、それが視野を広げ、日本を見つめ直すきっかけとなりました。
これから留学を考えているのであれば、世界にぜひ勇気をもって踏み出してみてください。積極的に人と触れ合ってみてください。私のようにきっとあなたの人生に大きな影響を与える経験やかけがえのない友人に出会い、彩り豊かな世界が広がるはずです。そして、留学へと踏み出した限られた時間をどう過ごすのかしっかり計画をたて、メリハリをつけた時間を過ごしてください。
知の森基金へのメッセージ
最後に今回の留学に際し、支えてくださった信州大学のグローバル化推進センターの皆様、国際企画課、教育学部グローバルデスクの皆様、指導教員、家族、友人に感謝しております。
また、知の森基金の皆様には、円安が続き社会情勢が不安定の中、ご支援・ご援助をいただき、誠にありがとうございました。お金に変えることができない貴重な経験や学びを得た今、私は次へのステージへ更なる成長へと繋げていきたいと思います。本当にありがとうございました。
